今日しみじみ考えたこと。

今月末、金沢の大学で行われる片山右京さんの講義にご一緒させていただくことになった。
片山右京さんといえば、元F1ドライバーとして有名だが、F1を降りてからも、ル・マンパリダカールラリーで活躍なさる他、
最近では、登山家として、8000m級の山々に挑戦し続けている。
正直に言うと。。。
今まで私は登山家のみなさんの気持ちが測れずにいた。
どうして、何日もかけて、自分の身体を酷使し、高いお金をかけて、命を危険にさらしてまで山に登ろうとするんだろう?
汗だくになったって、何日もお風呂にも入れないんだよなぁ。。おいしいものも食べられそうにないし、
ましてや冬の山って、寒いだろうし、第一、雪崩がおきたら大変!などなど。。。
山梨に生まれ、父親も登山を趣味にしていたが、私自身は富士山でさえ登ったことがない。
しかし、片山さんにお話を伺う前に、少しでも山の世界を知っておきたいと思い直し、
2人の登山家の実話をもとにした映画「運命を分けたザイル」を観てみることにした。
舞台は、アンデスのシウラグランデ峰。
20年ほど前、イギリスの2人の若者が前人未到と言われるこの山の登頂に挑戦したが、下山途中、1人が足を骨折してしまう。
雪と氷に覆われた高度6400mで、なんとか2人とも生きて帰ろうとザイルを使って下山を試みるが、
吹雪は激しくなり、疲労は極限まで達し、このままでは2人とも死んでしまう状況に陥ってしまう。
そして究極の選択を突きつけられ、ついには、ザイルを切ることに。。。
この映画は今までの山を舞台にした作品に比べ、はるかにリアルな映像を再現したといわれている。
また本人たちのインタビューも要所要所に挿入されていて、その時の死を目前にした抜き差しならない状況が、
山を知らない私にさえ、ひしひしと伝わってきた。
まさに命がけ。
でも命がけだからこそ、自分の命と真正面に向き合い、何とか前へ進もうと、自分の今持ちうる能力フル稼働させ、
たとえ10mでも20mでも目標を決めて、歩くんだ!生きるんだ!と自分を奮い立たせる。
そして、杖をつき、時には這いながらも、ようやくベースキャンプまでたどりつく。
なんだか、ひるがえって、自分のこの下界での生き方を考えてしまった。。。
今私たちが暮らすこの世の中は、危険や問題もあるけれど、なんとなく生きていこうと思えば、なんとなく生きていける社会。
全身全霊をかけて、自分の命や能力をまっすぐに見据えて、必死になって何かに取り組むことなど今までどれくらいあったろう。。。
それどころか見栄や体裁にずいぶん振り回されているようにも思える。
登山家のみなさんは山にのぼることで、虚飾を捨て去り、純粋に「生きる」ということを深く考えることができるのかもしれないな。。。
何となく、登山家のみなさんんがうらやましくも思えてきた。。。